あらすじ
鏡の前で、娘が“悪役の台詞”を練習していた。
赤い添削まで入った紙を握りしめて、震える声で言う。
「お母さま。わたし、“悪役”にならないといけないんだって」
貴族社会の「歓迎」には、分かりやすい悪役が必要らしい。
大人たちが気持ちよく正義を語るために、子どもが燃やされる。そんな舞台に、娘を上げる気はない。
「その役、あなたの仕事じゃない。お母さまが、許さない」
母は怒鳴らず、正論で殴らず、舞台そのものをひっくり返す。
悪役がいないなら、断罪は成立しない。
これは、子どもを守るために“物語の役”を拒否した母と娘の、短い遠足の話。