あらすじ

新人賞に続き大きな文学賞を受賞した若手作家・芦原透は、称賛に囲まれながらも喜びを実感できず、恋人・絵里の感情にも共鳴できない自分に戸惑っていた。彼の額には「天才の証」とされる角が生えており、成長するにつれ他人への共感能力が失われていく。編集者・久我はそれを才能の深化だと称え、文壇の重鎮で角を持つ作家・三島静香も「角が生えた時点で鬼になった」と言い切り、観察と解剖だけで人間を描けると語る。  やがて絵里の父が急逝し、深い悲しみに沈む絵里の前でも透の心は動かない。葬儀の場でも彼は冷静な観察者でしかなく、絵里は「あなたはもう人間じゃない」と告げて家を出る。透は絵里の体験を題材に短編「喪失の重さ」を書き上げ高評価を得るが、絵里には「解剖図のようで、生きた心が描かれていない」と拒絶される。  彼女は「角を折って人間に戻ったら、また一緒にいられる」と告げて去り、透は才能を捨てるか、鬼として書き続けるかの選択を迫られる。角を折れば共感と愛が戻るかもしれないが、作家としての才能は失われると久我は警告する。苦悩の末、透は激痛に耐えながらも角を折ることをやめ、新作「鬼は内」を書く道を選ぶ。作品は角を持つ小説家が恋人との関係に悩む物語で、結末はあえて曖昧にした。  透は絵里に「会いたい」と連絡し、冬の駅のホームで再会する。彼が帽子を脱いだ瞬間、角があるのかないのかは誰にも明かされない。ただ最後に、「私はまだ、書き続けている」とだけ示され、透が鬼と人間の狭間で書き続ける存在として生きていることだけが確かな事実として残される。

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エブリスタ2026/02/14
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