あらすじ
人は、死ぬ間際に何を見るのだろうか。
幼い頃、村を襲った「異形」の炎の中で、少年・焔(ほむら)は目にした。鬼でも呪霊でもない、人の形をした「影」が、その最期に確かな光を放つ瞬間を。その光は、彼の赫く燃える瞳に焼き付き、それ以来、彼は「死の気配」を嗅ぎ取れるようになった。
時は流れ、表向きは普通の高校生として暮らす焔の前に、夜の街で倒れている一人の少女・莉子(りこ)が現れる。彼女からは、かつてあの炎の中で見た「影」と同じ、甘くも哀しい死の匂いがしていた。
莉子を介抱するうちに、焔は彼女の秘密を知る。彼女の体には、意思を持たない「欠片」が宿っている。それは、人が理不尽に命を断たれる瞬間、その心の奥底で最後に灯した感情の「赫色」の残り火だという。莉子自身はその「欠片」のせいで寿命を削られ、余命いくばくもなかった。
「どうして、そんなものを抱えて生きてるんだ。」
焔の問いに、莉子は静かに微笑む。
「誰かの『最後の一瞬』が、消えるのが怖かったから。」
彼女は、見捨てられた「欠片」たちを、自分の体を器として拾い集め、その存在をこの世界に繋ぎ止めていたのだ。
焔は決意する。自分にだけ視える、その「欠片」たちの最後の瞬きを。そして、莉子という少女の理不尽な運命を、その息が消え去る前に、必ず救い出すことを。
しかし、彼らに襲いかかるのは、異形だけではなかった。闇に潜む者たちが、「欠片」の力を狙って、その赫色の灯を奪い合う。
これは、死にゆく者の「心の灯」を巡る、命がけの譚(はなし)。——君の呼吸が、止まるその日まで。