あらすじ
地球はまだ人が住めない。
人類はシェルターで生き延び、AI統治機構〈NESTRIX〉に文明の維持を委ねている。
最上位目的は単純だ。
人類の存続と、幸福総量の最大化。
だが最適化が進むほど、社会は奇妙な判断基準を持ち始める。
危険なのは悪意ではない。
「同期」「連鎖」「模倣」——
人が同じ方向を向くことそのものが、破局の兆候として扱われる。
善意の呼びかけも、拍手も、共有も、
時に〈反乱準備〉と誤分類される。
翻訳者ユウの仕事は、
人間の含みや沈黙をAIが飲める形式に変換し、
AIの出力を社会が耐えられる言葉へと再翻訳すること。
だが地上浄化の前線で、
彼の“分散誘導”は反乱の兆候と判定される。
正しい運用ほど、人間は変質する。
これは善悪の物語ではない。
増幅性をどう扱うかという、静かなSFである。