あらすじ
36歳独身、派遣社員の木下春香は、高校時代の親友・美咲から毎年届く年賀状に、10年間返事を出せずにいた。 結婚、出産、二人目の誕生、マイホーム購入──美咲の人生は順調に進んでいく。一方、春香は会社をリストラされ、恋愛も友人関係も停滞したまま。年賀状を受け取るたびに、「報告できる近況が何もない」と苦しみ、SNSで友人たちの幸せを見ては自分と比較し、劣等感に苛まれていた。 「幸せな人に、幸せじゃない自分が返事を書く資格はない」──そんな歪んだ思い込みが、春香の心を縛っていた。 しかしある日、過去の年賀状や美咲からの手紙を見返すうちに、春香は気づく。美咲の笑顔の裏にも、きっと様々な苦労や悩みがあること。そして、自分が「何もない」と思い込んでいただけで、実は日々の散歩、読書、絵を描く時間、家族や友人との繋がりなど、大切なものをたくさん持っていたこと。 「世間の物差し」ではなく「自分の物差し」で人生を測る勇気を得た春香は、ついに10年ぶりに美咲へ返事を書く。 それは友人への返事であると同時に、「私の人生は、これでいい」という自分自身への答えでもあった。