あらすじ
「見なかったことにしてください……お願いします」
完全下校時刻を過ぎた演劇部の部室。自ら構築した平穏を守る谷大海は、そこで寝泊まりする少女・白峰冬香を目撃する。
必死な懇願を前に大海が導き出した答えは、冬香の滞在を見逃し、不可解な現状に加担するという非合理的な選択だった。
冬香の秘密の共犯者となったその日から、大海の世界は変質し始める。
自分を保つために正解を演じ続ける少女と、道理という物差しで生きる少年。
理不尽が蔓延する学校という閉鎖された空間において、大海が不条理を拒むために築いた一貫性は、冬香という存在によって静かに、しかし、不可逆的に塗り替えられていく。
これは、互いの欠落に触れた二人の境界が、少しずつ溶け合っていく物語。
――恋と呼ぶにはまだあまりに不確かな、長い日々の始まり。