あらすじ
「オーイ! オーイ。おーい……」
声は掠れ、濁り、豪雨に叩き潰されて消えていく。喉がひりつき、胸の奥が縮み、おれはそのまま泣きたくなった。
おれの人生はどん詰まりだ。弱り目に祟り目とはよく言ったもので、弱った者をいたぶるのはなにも人間に限った話じゃないらしい。今まさに、その事実を全身で思い知らされている。
山で遭難した挙句に、この容赦のない土砂降り。視界は真っ白に泡立ち、もともと当てにならなかった方向感覚は、完膚なきまでにぶっ壊された。きっと神が上からションベンしているんだ。子供が蟻の巣に水を流し込むみたいに。