あらすじ
異世界に行きたかった。
剣と魔法の世界。
モンスターがいて、冒険者がいて、強くなれば英雄になれる世界。
そんな場所に行けるなら、
今のつまらない現実なんて、何度でも捨ててやると思った。
だから俺は、何度もトラックに飛び込んだ。
何度も車に体当たりした。
何度も「次こそは」と願いながら、死のうとした。
だが――死ねない。
骨は折れた。
血も吐いた。
入院もした。
医者には怒鳴られ、家族には泣かれ、警察には説教された。
それでも、異世界には行けなかった。
「次こそは」
「次こそは」
そうやって、何度目かも分からない挑戦の末――
ようやく、俺は死んだ。
そして目を開けた時、そこには白い空間と、
いかにも神様っぽい奴が立っていた。
「……来たか。例の狂人」
神様は、俺の顔を見るなり、ため息をついた。
「お前のせいで、地球の担当から苦情が山ほど来ておる」
「トラックの運転手も、何人もトラウマになっておるぞ」
そんなことはどうでもよかった。
俺は震える声で言った。
「……で、異世界には行けるんだよな?」
神様は、しばらく黙ってから、深くため息をついた。
「ああ、行けるとも。ここまでしつこい魂は初めてだ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は笑っていた。
ついにだ。
やっとだ。
何度も何度も死に損なって、それでも諦めなかった夢が、ようやく叶う。
――俺は、異世界中毒だ。
これは、異世界に行くためだけに人生を使い切った狂人が、
ようやく辿り着いた“夢の世界”で、大暴れする物語である。