あらすじ
『愛の守護者:ウァレンティヌスの祈り』
鉄の都に 冬が降りる
剣のきらめきは冷たく
人の心まで凍らせようとした
「愛は弱さだ」と
皇帝は言った
だが
ひとつの灯火が
地下の礼拝堂で揺れていた
震える指に指輪をはめる
明日、死地へ向かう兵士と
その名を胸に刻む恋人
ウァレンティヌスは目を閉じる
国家よりも
恐怖よりも
小さな鼓動を選ぶために
夜は密やかに誓いを包み
祈りは石壁を越えて広がる
やがて彼は鎖に繋がれる
それでも
その声は静かだった
「光は 奪えない」
盲いた少女の瞳に
朝が差す
奇跡とは
目が開くことではなく
誰かを信じる勇気だと知る
処刑前夜
冷たい牢にて
彼は初めて震える
それでも筆を取り
言葉を残す
恐れずに 愛しなさい
たとえ世界が
それを禁じても
最後に
小さく記す
――あなたのバレンタインより
剣は肉を断てても
祈りは断てない
二月十四日
赤い花が雪に落ちる
その日から
愛は祝われるようになった
遠い国で
チョコレートが手渡され
カードが開かれ
誰かの名前が囁かれるたび
見えない守護者は
そっと微笑む
愛は弱さではない
守るために
差し出す勇気だと
冬の底で灯る
消えない光の名を
ウァレンティヌスと呼ぶ