あらすじ
江戸中期、豪商・桐生造酒之助は表向き薬種問屋を営みながら、裏では捕らえた鬼・朧の涙を「甘露」として密売し、不老不死の薬で巨万の富を築く。感情を持たず悲劇を聞けば自動的に涙を流す朧を「苦しまない道具」「完璧な生産機械」と正当化し、貧困から這い上がった自身の成功を「弱肉強食の正しさ」と信じて疑わない。
ある夜、娘・雪乃が地下牢の朧と出会い、毎晩楽しい話や美しい物語を聞かせるうち、朧の口元に笑みが浮かぶ。喜助に悲劇を読ませる生産量が減った造酒之助は異変に気づき、現場で雪乃と笑う朧を発見。「泣くための商品が笑うなど許さん」と朧を鞭打ち、雪乃に「鬼に心はない。お前の生活もこの涙のおかげ」と説教し、娘を閉じ込める。
翌朝、雪乃は朧を解放して逃亡。激怒した造酒之助は番頭・喜助と剣客・鉄蔵を従え追跡を開始。茶屋で山中の行先を知り、鬼が雪乃を守るため炎を吐く報せを受け「感情を持った不良品は殺すしかない。娘は俺の所有物として取り戻す」と決意を固める。山中の洞窟で対峙。雪乃の「朧に心がある。あなたのような人間にはならない」との決別に対し、造酒之助は貧困からの苦闘を訴え「俺は正しい」と自己正当化。鉄蔵の襲撃を朧の炎が阻み、鉄蔵を焼き殺す。造酒之助の足を焼いた朧に「俺が道具と決める!」と叫ぶも追えず敗北。
火傷を負い屋敷に戻った造酒之助は非改心を貫き「新しい鬼を探せ」と喜助に命じ、在庫切れで没落するも山を彷徨い続ける。雪の中で朧と雪乃の幻を見ながら「俺は正しかったのか?」と呟き息絶える。一方、二人は遠くの村で穏やかに暮らし、「感情を持った鬼はもう鬼ではない」と朧が静かに締めくくる。