あらすじ
昼は図書館司書として働く朝倉凪には、夜になると人の嘘から生えた「鬼の皮」をナイフで剥ぐ剥鬼師としての顔がある。皮は嘘の重さで色と厚みを変え、凪はそれを剥いで依頼人の本音を吐き出させ、その後に訪れる「剥いだ後の沈黙」に静かな快感を覚えている。
過干渉な母への憎しみを隠して「良い娘」を演じ続けてきたOL・桐谷美咲は、重い赤い皮に息苦しさを覚え、凪に剥鬼を依頼する。母への殺意にも似た感情を叫び散らした彼女は、内容を覚えていないまま「胸が軽い」と語り、凪は自分の行為が救いなのか破壊なのか揺らぎ始める。
やがて美咲は、娘を「あなたのため」と支配してきた母・恵子を連れてくる。厚い黒い皮を剥がれた恵子は「必要とされたかっただけ」「娘しか自分の存在理由がなかった」と絶叫し、言葉を失った母娘は沈黙のまま手を重ねる。凪は、この親子を救ったのか壊したのか答えを出せない。元妻・麻子から「人の皮を剥ぐとき、あなたの目は楽しそうだった」と告げられた凪は、自分もまた夜には薄い皮を纏っていると知る。
師・神崎に自らの皮を剥がせと頼み、「人を救いたいのではなく、他人の弱さに安心したかっただけだ」と絶叫して崩れ落ちた凪は、自分こそ最も醜い嘘を抱えていたことを思い知る。それからも凪は剥鬼師として夜の街を歩き続ける。美咲からの「母と距離を取り、少し楽になった」という手紙を胸に、新たな依頼人には「剥いだ後、どう生きたいか」を問うようになり、自分の顔にまた新しい皮が生えることを受け入れながら、人は嘘を纏い、剥いでもまた嘘を生やす存在だと理解しつつ、剥いだ後の沈黙を聴く者として、人間と鬼の境界線を歩き続ける。