あらすじ
人がばら撒いた小銭の音を聞くと、その人間の未来が見える――
そんな奇妙な力を持つ、下町の工場で働く中年男。
ただし彼には、自らに課した掟があった。
悪い未来は正直に告げるが、良い未来は決して口にしない。
かつて幸福な未来を告げた相手が、その後すべてを失うのを見てきたからだ。
ある夜、行きつけの居酒屋で会計の際に小銭を落とした男は、
これまで聞いたことのないほど澄んだ音を耳にする。
その音が見せたのは、気になっていた店員の女性と結ばれ、
家族を持ち、穏やかに暮らす自分自身の未来だった。
それが罠だと分かっていながら、
男はその未来に手を伸ばしてしまう。