あらすじ

あらすじ 民俗学講師の藤野誠一、三十四歳。祖母の三回忌で、二十五年ぶりに東北の小さな村を訪れた。 幼い頃、夏休みをこの村で過ごした記憶がある。だが、なぜか思い出せない。従兄と遊んだはずなのに、その顔も名前も靄がかかったように浮かんでこない。 村人たちは何かを隠している。大谷戸と呼ばれる広大な田んぼについて尋ねると、誰もが口を閉ざす。 「見るな」「帰れ」「余計なことを調べるな」 祖父の遺品から見つかった古い手帳には、不穏な言葉が記されていた。 「また出た。見ていない」 「圭介の様子がおかしい」 「忘れてくれればいい」 圭介。 その名前を見た瞬間、封印されていた記憶が疼き始める。 従兄の圭介は、あの夏の翌年に死んでいた。 彼は何を見たのか。自分はなぜ覚えていないのか。そして、村人たちが恐れる「それ」とは何なのか。 研究者として、知りたい。 従兄への弔いとして、見届けたい。 だが、村の古老は警告する。 「見て、理解したら、終わりだ」 稲穂が揺れる美しい田園の奥で、白いものが揺れている。 くねくねと。 ずっと、揺れている。 登場人物 藤野誠一(ふじの せいいち) 三十四歳。地方私立大学の任期付き講師。専門は民俗学。冷静で分析的な性格だが、分からないことを放置できない。幼少期の記憶に欠落があり、その空白が彼を故郷へと呼び戻す。 藤野圭介(ふじの けいすけ) 誠一の従兄。享年十一歳。かつて誠一の憧れだった少年。あの夏、大谷戸で「それ」を見た。 黒沢健造(くろさわ けんぞう) 七十二歳。村の古参農家。誠一の祖父の親友だった。頑固で無愛想だが、誠一を止めようとする。その警告には、言葉にできない重みがある。 原田ミツ(はらだ みつ) 七十八歳。村唯一の商店の店主。愛想がよく話し好き。「自分の目で確かめてみたら」と誠一に告げる。その言葉の裏に、何があるのか。 村井敏子(むらい としこ) 八十歳。元小学校教師。認知症の症状があり、会話は断片的。だが時折、鮮明な記憶が蘇る。「聞いたら、見たのと同じになるよ」 三浦香織(みうら かおり) 二十九歳。誠一の勤務先の職員。誠一が密かに想いを寄せる相手。「帰ったら連絡します」——その約束は果たされるのか。 この物語について 見てはいけない。 語ってはいけない。 理解してはいけない。 東北の寒村に伝わる禁忌。それは迷信なのか、それとも——。 本作は、「知りたい」という人間の根源的な欲求が招く破滅を描いたホラー小説です。派手な恐怖演出はありません。静かにじわじわと、日常が侵食されていく恐怖。見慣れた田園風景が、決定的に異質なものへと変わる瞬間。 全四十話予定。毎週金曜日更新。 あなたは最後まで、目を逸らしていられますか。

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カクヨム2026/02/13
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