あらすじ
ワイヤレスドール。
そういう名前のスポーツがある。
あまり有名ではないし、競技人口も決して多くはないが、あるにはある。
ソフトボールやベースボールのように、スポーツに用いる器具がそのままスポーツ名になっている。
つまりワイヤレスドールとは、「ワイヤレスドール」を用いて行うスポーツである。
サイコキネシス。
そういう力があることは広く知られている。
よく「1000人に一人くらいの割合で覚醒する」と言われている、アレである。
しかし多くの人にとっては、それを題材にした小説や漫画の中でのイメージが強く、正しい理解はあまりされていない。
実際のサイコキネシスというものは、動かす対象や個数などに面倒くさい条件がある。
まず、猫やドブネズミからミジンコに至るまで、いきものに対して働きかけることはない。
かといって、ボウリングの玉やボールペンといった、無機物にもほとんど効果がない。
先端が股のように分かれている、いわゆる「エッチな大根」なら……少し浮かぶかもしれない。
人形なら、もっと浮く。
つまり、「人間に形が近いもの」ほど、よくサイコキネシスが効いた。
それでいて「いきもの」には一切効果がないのだから……
「サイコキネシス」とは「手を使わずに人形をちょっと動かせる力」でしかない。
使い道などほとんどない。
しかしそれではなんだかもったいない。
そこで先人たちは、せっかくなのでこれを使って競技でもしてみることにした。
人形同士を戦わせることにしたのである。
かれらに操られる人形は、「糸を手繰らずに操る人形」だ。
ゆえに、その人形たちは。
ゆえに、その人形たちの戦いは。
ゆえに、その人形たちを使ったスポーツは。
こう呼ばれた。
「ワイヤレスドール」
これは、ワイヤレスドールに関わる少年少女のお話。