あらすじ
かつて、ヒトの芸術は自己宇宙(セルフバース)の開拓にまで到達した。
――この世界は、ただ、「ヴォルテクスト」と呼ばれている。
ここには魔法も、ヨーカイも、カミもホトケも混じっている。
デーモンが尼さんやって、ヴァルキュリアが路地裏でヤクを売っている。
朝からそこらの獣人が春を売って、子供の命がせいぜい三日分のパンと等価で売り買いされる、イカれ腐ったサイコーの世紀末。
なんでこうなったかって? それはカンタン。旧時代の支配者たちが便利に頼って堕落したから。
でも怒ったのは神でもなければ、神の如き知性を手に入れつつあった人工知能でもなかった。
思い上がったニンゲンだった。
君たちは知っているかい? 便利な、AIアート、ってやつ。
AI生成アートに対抗した一部の求道的なアーティストは、究極の人間的超芸術として、「セルフバース・アート」を開拓したんだよ。
人の脳の秘奥の秘奥にある扉をこじ開けて、己の宇宙に到達したんだ。
しかし、その結果いくばくかの自己宇宙が激突し、凄まじい対消滅を起こした。
それが世にいう芸術的対消滅。
「アーティスティック・ヴォイド・アウト」――これによって、世界は吹き飛び、砕け散り、混じり合い、いびつで「アヴァンギャルド」な状態になった。
まとまりつつ渦を巻き、砕けて混じって、文脈が形成されつつ別の意味へと変遷する。そういう世界ができた。
ようこそ、ヴォルテクスト・ストランドへ。
ここは、自己宇宙(セルフバース)のごった煮世界(ヴォルテクスト)。
僕は「水先案内人(ガイド)」。君をいざなおう、この世界に。
さっそくだけれど、名前を教えてもらっていいかな?
――なるほど。では君は……ブラス・ギャラリーだね。
なかなかどうして、いい名前じゃないか、ブラス。