あらすじ
お盆に、死んだ澪(みお)が庭の柚子の木の下に立っていた。それ以来、澪は野良猫みたいにちょくちょく現れるようになった。私はそれをずっと無視していたけど、澪は気が向いたら近づいて、飽きたら離れて、勝手に喋っている。
冬至を目前にしたある日、ずっと疑惑を抱いていた女性に夫が庭の柚子をあげたいと言ってきた。
「浮気されてるかも」
その日、私ははじめて澪に返事をした。大学時代、夫を好きだった澪。私と同じ「みお」という名前を持つ澪。澪はなぜ今になって現れたんだろう。
夏至から冬至の、冷たくて熱くて、なにも起こらない幻想純文学――。