あらすじ

節分の日。 買った福豆をまき、誰もいない部屋で「鬼は外」と声を上げたその直後――俺は死んだ。 次に目を覚ましたとき、そこは見知らぬ森だった。 そして俺の姿は、人間ではなくなっていた。 赤い肌。 額から伸びる二本の角。 異様なまでの怪力と、常識外れの再生能力。 どう見ても“鬼”。 だが、この世界に鬼という種族は存在しない。 魔族でもない。 人間でもない。 既存のどの種族にも当てはまらない、名もなき異物。 言葉は通じる。理性もある。 それでも姿を見せた瞬間に恐怖され、拒絶される。 逃げられ、警戒され、ときに討伐対象として刃を向けられる。 理解されないまま、ただ「怪物」として扱われる日々。 森を渡り、山を越え、街道の外れを彷徨う。 鬼の身体は生存に向いている。 飢えにも寒さにも強く、傷は瞬く間に塞がる。 だが、生きられることと、居場所があることは違う。 人と共にあろうとすれば強すぎる力が壁となり、 怪物として割り切ろうとすれば、人間だった頃の記憶が足を引く。 俺は何者なのか。 この世界における立ち位置はどこなのか。 勇者でもない。 魔王でもない。 選ばれた存在ですらない。 これは、豆を投げられる側に転生してしまった男が、 人と世界の境界で“自分の立ち位置”を探し続ける物語。 恐れられながらも、拒絶されながらも、 それでもなお人のすぐ外側で生きようとする鬼の話だ。 境界に立つ異物は、 やがて何者としてこの世界に刻まれるのか。 静かで、長い、生の物語が始まる。

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エブリスタ
エブリスタ2026/02/12
  • 現在の作品異世界で鬼に転生した俺、この世界に鬼はいないらしい