あらすじ

夜の海で、十字軍のガレー船とアイユーブ朝の軍船が刃を交える。 傭兵として乗り込んでいたメリサンドは、合図も号令も待たず、ただ最短の動きで敵船へ移る。 振るわれる刃を避け、音を立てずに敵を無力化し、ついには最も手練れの戦士を一騎打ちで下す。 戦いは彼女にとって激情でも誇りでもなく、ただの「作業」だった。 戦闘の果て、指揮官は捕縛され、船は制圧される。 周囲が歓声を上げる中、メリサンドだけが波音に耳を澄ませている。 その異様な戦い方――最小限の動き、躊躇のない判断――は、周囲から「異常」と評される。 だが彼女自身は知っている。 それが才能でも信念でもなく、生き延びるために削ぎ落とされ続けた癖であることを。 物語は、彼女の記憶へと遡る。 アッコンで生まれ育ち、港と城壁に囲まれた戦争の日常の中で過ごした幼少期。 破城槌の音を子守歌に、血と腐臭を空気として吸い込み、遊びも未来も知らずに育った日々。 十二歳で初めて人を殺し、何も感じなかった理由。 この第一話は、 一人の傭兵が「異常な戦士」として完成した姿を描くと同時に、 その異常がどこから始まったのかを静かに示す序章である。 それは英雄の誕生ではない。 戦争という仕組みの中で、 一人の人間が「戦場に最適化されてしまった」物語の始まりだ。

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小説を読もう2026/02/12
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