あらすじ

「本音を言えないまま飲み込む言葉は、いつか自分を壊す毒になる」あの日、車で二十分の距離を移動しただけで、私の世界からは色が消えた。 新しい学校で私を待っていたのは、娯楽のテレビすら映らない家という、受け入れがたい現実。 「昨日、あのテレビ見た?」 その一言に頷いた瞬間、私の人生は「真っ赤な嘘」に塗り固められていった。 周囲に合わせるために自分を殺し、嘘という毒を飲み込み続けた日々。 歪んでいく心はやがて、教室という閉ざされた空間で、決して消えない「大きな過ち」を招いてしまうーー。 絶望の底にいた私を暗闇から救い出してくれたのは、放課後の教室で方程式を教えてくれる、一人の先生だった。 答えが一つに定まる数式だけが、偽りだらけの私を現実につなぎ止めてくれた。 先生への、決して叶うことのない恋。 それは道端に実る野いちごのように、甘酸っぱくて、けれど摘み取ろうとすれば指先に痛みが走る。 あの日、白く曇った助手席の窓に指で書いた、私の本当の願い。 それを見た先生が、私に見せた「背中」とは。 これは、誰にも言えなかった「あの頃の私」へ捧げる、真実の記録。 ついた嘘も、飲み込んだ涙も、すべてはあのいちごのように鮮烈な、私の人生の一部だった。 「一度の過ちで、あなたの価値がすべて決まるわけじゃない」そう願う私がいま、三十六年前の記憶の扉を、静かに開きます。 英吉 栞

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カクヨム
カクヨム2026/02/12
  • 現在の作品『真っ赤な嘘と、いちごの毒』