あらすじ

真冬のような寒さが続く地方都市の路面電車庫。 創業当時から街を走り続けてきた老車両「緑爺(みどじい)」は、老朽化のため、来る三月三十一日をもって引退することが決まっていた。 彼には、鉄の塊に戻る前にどうしても叶えたい、たった一つの願いがある。 それは、かつて多くの人々を運んだ思い出の場所――S字カーブの桜並木を、満開の花の下でもう一度だけ駆け抜けること。 しかし、無情にも連日の冷たい雨が蕾を固く閉ざし続ける。 隣で出番を待つ最新鋭の新型車両「ノヴァ」は、冷徹なデータをもとに告げる。「開花予想日は四月四日。あなたの引退には間に合いません」と。 刻一刻と迫るタイムリミット。 軋む車体を奮い立たせ、奇跡を信じてラストランに向かう緑爺。 果たして、彼は最後の春を見ることができるのか。 冷たい鉄の身体に宿る、温かくて切ない「魂」の物語。 【三題噺 #132】「想」「実」「仲間」と 第72回「2000文字以内でお題に挑戦!」(路面電車で春を待つ)に参加しています。

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カクヨム
カクヨム2026/02/12
  • 現在の作品錆びた緑爺が見る夢は、満開の春