あらすじ
丸の内トラストタワーを思わせる高層ビルの24階。
外資系ファッションメーカーで数字を追う日々を送る彩香(35歳)は、冷え切ったオフィスと効率的な結婚生活の中で、自らの心が乾いた陶器のように脆くなっているのを感じていた。
そんな彼女の前に現れたのは、ビルのインフラを支える現場責任者の浩司(52歳)。
最新トレンドと香水に彩られた39階の世界とは対照的な、汗とオイル、そして地に足のついた「生活」の匂いを纏った男だった。
エレベーターという密室で交わされた、わずかな言葉。
それが、決して交わるはずのなかった二人の境界線を曖昧にしていく。
「一時間だけなら」
横浜のタワーマンションへ帰る足を止め、彩香は浩司に手首を掴まれるまま、夜の京橋へと沈んでいく。
これは、孤独を抱えた大人が、都会の隙間で「自分自身の輪郭」を取り戻そうとする、背徳的で切ない再再生の物語。
【登場人物】
彩香(35):39階、外資系アパレルMD。洗練された生活の裏で、空虚さを抱える。
浩司(52):27階、設備会社現場責任者。無骨だが、家族を支える男の熱を持つ。