あらすじ
庭の花壇に咲く椿の花。
それは、妻・椿が何より大切に育ててきた花だった。
病に伏した妻に代わり、夫は見よう見まねで花の世話をするが、咲いた花はどこか違う。
色も、葉も、影さえも。
やがて訪れる別れの時。
妻は自らの死を静かに受け入れ、ある願いを残す。
「お墓はいりません。庭に埋めてください。朝影を導にして」
そして夫に託される、小さな巾着と一粒の石。
――「必ずまた、あなたのもとへ帰ってきますから」
妻を土へ還したあと、芽吹く新たな命。
揺れる花と、揺れる影。
消えていく影と、残る温もり。
これは、別れの物語であり、
それでもなお、そばに在り続ける愛の物語。