あらすじ

死者が国を統治する―― それは狂気か、それとも秩序崩壊の末に生まれた必然だったのか。 聖暦第一千年紀の終焉、ゲノッセル大陸西部は未曾有の混乱に沈んでいた。 レーヴェンス教世界の守護者として君臨してきたルトック王国は王位継承戦争によって分裂し、王権と教会の権威は急速に失墜する。内戦の果てに流入した異民族傭兵たちは定住者となり、やがて武力を背景に土地と主権を要求する存在へと変貌していった。 その混沌の只中、聖暦1003年に誕生したのが、ネクロサーン聖骸国である。 この国家には、生きた王はいない。 統治者は、聖者マッカのヘンダルトの「聖骸」――腐敗せず、聖なる光を放つ死体であった。 ネクロ派と呼ばれる異端の信徒たちは、聖骸にいまだ魂が宿ると信じ、その光の在り方から意思を読み取り、国政を執り行った。法律、裁判、徴税、戦争と和平。そのすべてが「死者の意思」に基づくとされたのである。正統派教会はこれを冒涜として破門するが、もはやそれを止める力はどこにも残されていなかった。 本書は、ネクロサーン聖骸国という異様な国家を、単なる怪異譚や異端史として片づけることを拒む。 同時代の年代記、教会文書、異民族側の記録、そして現代まで密かに受け継がれてきたネクロ派の教義を突き合わせながら、この国家がどのように成立し、いかに機能し、なぜ一定期間存続しえたのかを明らかにしていく。 死者が王であるという発想は、狂気だったのか。 それとも、王も神も裏切った世界において、人々が最後に選び取った「最も安全な統治」だったのか。 秩序崩壊の時代に生まれた、最も不気味で、最も合理的な国家―― ネクロサーン聖骸国の実像に、本書は迫る。

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小説を読もう2026/02/10
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