あらすじ
日本で何も救えないまま人生を終えた青年は、異世界で一人の少年として転生する。
だがそれは“選ばれた転生”ではなく、世界を修正するために送り込まれる存在としての転生だった。
宗教国家の森で衰弱して倒れていた少年リヒトを救ったのは、
世界の象徴であり救済の象徴でもある“聖女”セラフィナ。
だが彼女は救う側の存在ではなく、
制度と役割に押し潰され、壊れかけた一人の人間だった。
聖女に囲われるように神殿で生きることになったリヒトは、
やがてこの世界の歪みに気づいていく。
この世界では、
救済、裁き、浄化、粛清、選別が「正義」として制度化され、
宗教と権力によって人間の命が管理されていた。
リヒトの持つ力はただ一つ。
裁かないこと。
否定しないこと。
切り捨てないこと。
本来なら世界に消される存在を、
“存在していい”と強制的に許可する力。
彼は聖女、騎士団長、魔女、王族、神官――
罪と後悔と絶望を抱えた者たちを裁かず、否定せず、赦し続ける。
しかしリヒト自身は知っている。
自分はこの世界に永続的に存在する者ではないことを。
修正が終われば、必ず死に、また別の世界へ転生する存在であることを。
これは、
何度も死に、何度も生まれ変わりながら、
誰も裁かず、誰も否定せず、
赦し続ける少年の物語。
そして最後に彼は選ぶ。
力を失う代わりに、
世界を修正し続ける仕組みそのものを終わらせることを。
救済の名を持つ世界で、
裁きも選別も管理も存在しない、
“人間の世界”を生み出すために。