あらすじ

三月の雨が降る斎場。  NPO法人『箱舟』の代表理事・天童牧人は、保護していた少女の自殺を嘆き、カメラの前で涙を流していた。  その姿は、行き場のない若者に手を差し伸べる「現代の聖人」そのものだ。  だが、その裏で事務長・梶が弾く電卓の数字は冷酷な真実を告げていた。  保険金、口止め料、同情による寄付金。  少女の死は、わずか三ヶ月で数百万円の黒字を叩き出していたのだ。 「悲しいね、梶さん。……あの子が『永遠』を選んだ時の顔、本当に美しかった」  この施設は、若者の自立を支援する場所ではない。  傷ついた魂を癒やし、この世で最も幸福な瞬間を与え、そして穢れなきまま「安息」へと導くための祭壇だ。  その純粋すぎる救済は、結果として、最高品質の「悲劇」を出荷する捕食者のシステムとなっていた。  新たなターゲット、19歳の家出少女・明日葉。  聖人の仮面を被った怪物と、システムに加担する小悪党。  誰も裁くことのできない「純粋な善意」が、今日も獲物を迎え入れる。  現代社会の闇をえぐる、長編ノワール・サスペンス。

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カクヨム
カクヨム2026/02/10
  • 現在の作品善意という名の牧場