あらすじ
地方の小さな町で育った高校二年生・実里は、児童養護施設で暮らしながら、周囲と深く交わらず静かに日常を送っていた。都会への憧れやSNSの話題についていけない彼女は、半年前に何者かに殺害された同い年の家族同然の友人・凛の死をきっかけに、感情を表に出せなくなっていた。
ある春の日、実里は帰り道で目薬をさした瞬間、世界が歪み、現実とは重なり合う「もう一つの層」が見えるようになる。そこで彼女は、死んだはずの凛と再会する。凛は、人の記憶や感情が集積した異世界に囚われた存在となっており、自分が殺された理由が分からないまま留め置かれていると語る。
凛は実里に、自分を殺した犯人を現実世界で探してほしいと頼む。実里は生きたまま異世界と現実を行き来できる特異な存在であることを知り、戸惑いながらも凛の願いを受け入れる。
やがて実里は、凛が生前に家族に隠していた行動や、幼い施設の子・恵美に「宝物」を託していた事実を知り、凛の知らなかった一面と事件の手がかりに気づき始める。凛の死の真相を追うことは、同時に実里自身が失った感情や、止まっていた時間と向き合う旅でもあった。
――現実と死後の世界が重なり合う中、少女は大切な人の死の理由を探し、自分自身を取り戻そうとしていく。