あらすじ
空が割れ、それは嵐でも災害でもなかった。
まるで世界そのものが、爪で引き裂かれたようだった。
王都の真上に現れた黒い裂け目。
そこから現れたのは、空に浮かぶ巨大な城。
そして——
その城の頂に立つ、ひとりの男。
銀の髪。
闇をまとった黒衣。
冷たい瞳。
魔王。
地上に響く、静かな声。
「人間よ。勇者を呼べ」
王は命じた。
神官は祈った。
巨大な魔法陣が光り輝いた。
だが——
勇者は現れなかった。
一度。
二度。
三度。
何も起きない。
神官が震える声で告げる。
「……勇者は、来ません」
王都に絶望が落ちる。
魔王は空から見下ろし、わずかに笑った。
「勇者は一人だ。
そしてその一人がいないなら——世界は終わる」
黒い軍勢が動き出す。
城が燃え、塔が崩れ、人々が逃げ惑う。
その中で、ひとりの少女が立っていた。
震えながら。
それでも、目を逸らさず。
「……勇者は、いる」
誰に言ったわけでもない。
自分に言い聞かせるように。
「いないなら、探せばいい」
その小さな言葉が、
やがて世界を変えていく。
最後に残る問いはひとつ。
――勇者はだれ?