あらすじ
人類は、ノアの方舟を「神に選ばれた物語」として語り継いできた。
大洪水。裁き。救済。
だがそれは、残された側の記録に過ぎない。
真実は、もっと静かで、もっと現実的だった。
あの時代、人類は一つではなかった。
世界が沈むことを察知した者たちの中で、
未来をどう残すかを巡り、思想は二つに割れた。
祈りと自然に賭け、
地上文明を保存することを選んだ者たち。
彼らは巨大な舟を造り、
嵐が過ぎるのを待った。
そしてもう一つ――
世界そのものと距離を取ることを選んだ者たちがいた。
彼らは神を否定したのではない。
奇跡を信じなかっただけだ。
原子を分解し、物質をすり抜け、
地の底へと都市を築いた。
歴史は勝者によって書かれる。
生き残り、語り継いだ者たちが
「神話」を残した。
だが、記録されなかった選択も、
確かに存在している。
これは、
ノアの方舟から零れ落ちたもう一つの人類史。
下の世界から見上げた、真実の記録である。