あらすじ
〈意味が分かると怖い話〉を収集し、分析し、解説する。
それが名取純の日常だった。
どんな短文にも構造があり、条件があり、説明がある。
意味が分かれば、怖さは整理できる。
整理できるものは、安全だ。
だがある日、名取はひとつの奇妙な短文に出会う。
意味が分からない。
怖くない。
それなのに、削除できない。
分析を重ね、条件を並べ、他者に共有し、
「分かる側」であり続けようとする名取。
しかし、言葉にできない沈黙と、語られない立場が、
少しずつ彼の足元を揺るがしていく。
この物語は、怪異を描かない。
血も、幽霊も、説明可能な恐怖もない。
代わりに描かれるのは、
「意味を与える側」に立ち続けてきた人間が、
意味を与えないという選択に辿り着くまでの過程だ。
分かることは、本当に安全なのか。
語ることは、常に正しいのか。
そして――語られないものは、どこに残るのか。
読み終えたとき、
あなたはこの作品を「怖かった」とは言えないかもしれない。
だが、何かを言い切ることを、ためらうようになる。
それが、この物語の恐怖である。