あらすじ
かつて天使と悪魔は分かたれる前の存在――「あまつもの」だった。
人々の祈りと恐れによって、恵みを与える天と、穢れを受け持つ魔に分かれ、やがてそれぞれは天司と魔司として世界の均衡を保つ役目を負うことになる。
祈られすぎれば世界は息苦しくなり、穢れが溢れれば世界は崩れる。
天司と魔司は、人の世に紛れながら、善悪の偏りを「均す」存在として長い時を生きてきた。
天司・白鞘と魔司・黒羽は、同じ夜に分かたれた因縁の存在である。
本来ひとつだった彼らは、近づきすぎれば世界を歪めてしまうため、敵にも味方にもなれぬ距離を保ち続けてきた。
その関係は、憎しみでも対立でもなく、決して成就しない想い――恋へと変わっていく。
そんな均衡の時代に、天司と魔司の在り方を見抜く少女・澪が現れる。
彼女は天も魔も恐れず、祈らず、ただ「名を呼ぶ」ことで存在を肯定しようとする。
澪の存在は、天司と魔司が守り続けてきた均衡そのものを揺さぶり、彼らに問いを突きつける。
役目を選ぶか、想いを選ぶか。
名を呼ばれぬまま世界を支え続けるのか、それとも――。
天と魔、祈りと穢れ、人と異形。
すべてが溶け合う和の世界で、分かたれた存在たちの静かな恋と因縁が、次の時代の扉を開いていく。