あらすじ

聖域の解放

九歳の指先が覚えたのは
お絵かきでも ピアノでもなく
冷たい水の感触と
皺(しわ)の寄った背中の重みだった

「優しい子」という名の手枷(てかせ)
「家族」という名の、底のない泥濘(ぬかるみ)
私は誰かの部品として
九年の月日を ただ削り出してきた

祖母が遺したのは
わずかな金と ひとつの祈り

「――自分のために、生きなさい」

その言葉が
止まっていた時計を壊した

白い部屋で 誰かが言った

「あなたはもう、何もしなくていい」

枯れ果てたはずの瞳から
透明な自分自身が 溢れ出した

愛されなかったのは 私のせいじゃない

差し出した手のひらを
これからは
私の未来のために握りしめる

血の繋がりを
光の速さで断ち切り
私は 私の足で境界線を越える

かつての呪縛(しごと)を
誇り(しごと)に変えて

私はもう
誰の期待にも応えない

ただ 私であることを
今、自分に許したのだから

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アルファポリス
アルファポリス2026/02/10
  • 現在の作品聖域の解放 〜ヤングケアラー新菜の再出発