あらすじ
彫刻に魂を売った少年・奏汰。彼を突き動かしているのは、産声とともに視界に焼き付いた「光り輝く少女」の残像でした。しかし、その顔はどうしても思い出せない。唯一の理解者であった兄の失踪、そして心血を注いだ作品が地震で砕け散るという絶望の果てに、彼は雨の河原である「存在」に出会います。
それは、「透明な少女」でした。
目には見えない。けれど、触れればそこに確かな鼓動がある。誰からも認識されない彼女を連れ、奏汰は世間を捨てて山の麓の空き家で二人きりの生活を始めます。
視覚を排し、質感と気配だけで愛を深めていく五十年の歳月。 老いていく奏汰と、希薄になっていく透明な彼女。 やがて訪れる最期の時、奏汰は初めて彼女の「真実の顔」を目の当たりにします。
「君を、この世界に繋ぎ止める。たとえ君が消えてしまっても」
失った兄の影、目に見えない愛のカタチ、そして人生のすべてを賭して刻み込んだ「最後の一撃」。孤独な彫刻家が辿り着いた究極の再会とは何だったのか。
石を削る乾いた音と、静かな雨音。 美しくも狂おしい、究極の純愛と執念の物語。
扉の向こう側で待つ「あの声」を聞いたとき、あなたの心にも、かつて愛した誰かの確かな温度が蘇るはずです。