あらすじ
霧の森に郵便局がある。
行った者は、帰り道を忘れる。
毎晩、宛先のない手紙が届く。
宛先が無いのではない。
宛先が“消された”のだ。
封を開けると、紙があなたの記憶を吸う。
読んだ瞬間、世界が一文字だけ欠ける。
写真の端が剥がれ、声の主が消え、家族の人数が減る。
郵便局は静かに笑う。
「配達先は、あなたの中です」
そして気づく。
この郵便局は森にあるのではない。
あなたが息を吐くたび、ここが増える。
最後に届くのは手紙じゃない。
あなたの人生の“空白”だ。
次の配達で、宛先はあなたになる。