あらすじ
マルクス・アッシュベルク、四十六歳。冒険者ギルドの魔法技術顧問。
かつて「魔法スキルバブル」が崩壊し、魔法使いの大半が職を失った時代——いわゆる「氷河期(アイスエイジ)」を生き延びた男だ。最新スキルは使わない。派手な魔法も撃たない。だが、古代魔法陣の解析、魔力回路のデバッグ、レガシー魔道具の保守——基礎理論と経験だけを武器に、小さなギルドで地道に食い繋いできた。
世間は彼を「ロートル」と呼ぶ。時代遅れの魔法使い、と。
だが、最新スキルが解けない問題を、基礎理論が解くこともある。スキルの中身(ソースコード)を読める者だけが辿り着ける答えがある。
情報漏洩、記憶の改竄、前任者が放置したレガシーシステムの暴走——現代の魔法社会が抱える厄介な問題に、この男は古い技術と職人の勘で挑んでいく。最小の魔力で、最大の効果を。それがロートル魔法使いの流儀だ。
中欧風の街並み、旨い飯、黒ビール。
そして時折、若い才能との出会い。
これは、時代遅れと呼ばれた男の、静かな矜持の物語。