あらすじ

唐という、巨大な虚飾が崩れようとしていた。 泥の中に生まれた男、朱温。 その胸に宿るのは、天下への野心ではない。 ただ、己の指先に触れる確かな「生」の感触と、 すべてを食い破らねば消えぬ、乾ききった飢えだった。 黄巣の乱という混沌を、男は牙を剥いて駆け抜ける。 裏切り。虐殺。そして、孤独。 恐怖こそが唯一の秩序だと信じ、 鉄の軍団を率いて、古き時代の残滓を黄河に沈めた。 宿敵・李克用。 砂漠の風を纏ったその男との死闘だけが、 朱温の凍てついた血を沸かす。 皇帝という名の空虚な玉座に座ったとき、 男の背後には、自らが撒いた絶望の影が迫っていた。 刃を突きつけたのは、血を分けた実の息子。 「やれ。泥の中へ、俺を帰してくれ」 崩壊する国の中心で、男は笑う。 一人の男が「個」を貫き、修羅として生きた、その壮絶なる軌跡。

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小説を読もう2026/02/09
  • 現在の作品泥濘の牙