あらすじ
婚活も恋愛も、もう疲れた。
「いい人」の優しさが、都合よく形を変えていくのを何度も見てきた三十代のサキは、終電ホームで限界を迎え――気づけば異世界の治療院にいた。
言葉は通じず、誤解が命取り。簡易の翻訳護符で最低限は話せても、“人の都合が混ざる話”だけは信用できない。
だから彼女は決める。「用件は書面で」と。
配属された騎士団補給部で帳簿の乱れを正し始めたサキは、やがて横領の濡れ衣を着せられる。
けれど氷の騎士団長アルベルトは、彼女の行動を見ていた。侮辱を侮辱だと断じ、事実と手続きで守り抜く。
距離の取り方も、触れる前の確認も、交際すらも――彼は彼女の不安を冗談で流さず、誠実に「書面」にして差し出した。
優しさが怖い彼女が、怖さごと抱えたまま前に進むために。
最後にサキは宣言する。
書面はもう要らない。けれど私は、都合のいい女にはならない――選ぶのは、いつだって私だ。