あらすじ
フリーランスの直人は、夢を追う年下の恋人のために、自らの時間、睡眠、そして預金残高を削り、献身的に彼女を支えてきた。それが愛だと信じて。
深夜二時。仕事の合間に、彼は冷蔵庫の奥で賞味期限の切れたヨーグルトを見つける。青白い光に照らされた庫内の寒々しさと、スマートフォンの液晶で、自分の削り出した金を使って「自分へのご褒美」と笑う彼女の投稿。その対比が、直人の中で積み重なってきた献身の重みを、一瞬にして虚無へと変える。
沸き上がるのは怒りではなく、圧倒的な「熱の消失」だった。
彼女を温めるために放射し続けた直人の熱量は、もはや回復不能な臨界点を越えて枯渇していた。
感情という資源をすべて使い切り、ただの「生活者」という名の空洞に成り下がった男。愛が死んだあとに残された、残酷なまでに「普通」な日常の始まりを描く、冷え切った解剖記録。