あらすじ
大正十二年、山深い朱神村。
神主の息子・樹は、幼なじみの咲夜を迎えに行った。
——人形神の花嫁として、嫁ぐために帰郷した彼女を。
隠国塚に祀られた、木彫りの美しい青年。
数百年前、殉死者の代わりに作られた守護の神。
冷たく、硬く、動かない——はずだった。
「この人は、温かい」
日ごとに艶を増す咲夜。温もりを帯びる人形。
樹だけが見届けていた。木偶が「夫」になっていく姿を。
九月一日。大地が揺れた時、神は身を挺して妻を守った。
背中を砕き、樹液の血を流しながら。
死にゆく花嫁と、涙を流すことを覚えた神。
そして、ただ見守ることしかできない男の物語。
※「隠国十夜」第九夜。