あらすじ
空中に足場を作り歩く魔法《空歩》を使う調査員・リアンは、
病弱な婚約者テンムと、慎ましく穏やかな日々を送っている。
月が白く見える夜になると、原因不明の「月影症」に苦しむテンム。
リアンは彼女を支えるため、危険な討伐を避け、
ただ“変わらない日常”を守ることだけを望んでいた。
だが、森の調査を重ねるうち、リアンは違和感に気づく。
《空歩》が、いつの間にか変わり始めている。
落ちる恐怖が消え、足場が先に用意されているかのような感覚。
それは成長とも違う、説明のつかない変化だった。
やがて届く、奇妙な依頼。
討伐禁止、危険度不明、条件は「空中移動が可能な者」。
森の奥で彼を待っていたのは、
姿も名も持たない“意思”からの、ただの「頼まれごと」。
一方で、テンムの存在は少しずつ淡くなっていく。
病だと思われていた症状は、
世界と彼女を繋ぐ“兆し”だった。
地上に残るか、天へ行くか。
天使か、悪魔か。
選ばれるのではなく、選ぶための試練が、静かに始まる。
空を歩くことが、
やがて“位相を越えること”へ変わる時――
二人は、同じ場所へ辿り着く。
これは、
愛する人の隣に立つために、
静かな階段を一歩ずつ登る物語。