あらすじ
十六歳の雨の夜、少年・ゆうたは、アパートの二階のベランダから差し出された一本の傘によって、名も知らぬ年上の女性と出会う。
保育士として働く彼女は、昼の顔とは違う、どこか気だるく距離を保った大人だった。
短い交流の中で、ゆうたは彼女に淡い感情を抱きかけるが、「君はまだ、子どもってこと」という言葉によって、その想いは静かに退けられる。
それが正しさであると、当時の彼は理解できなかった。
四年後、二十歳になったゆうたは、憧れ続けてきた三歳年上の幼なじみと同じ大学に進学する。
しかし再会の先に待っていたのは、彼女に既に恋人がいるという現実だった。
告白することすらできないまま、期待だけが行き場を失い、ゆうたは傷心のまま夜の街を彷徨う。
その帰り道、彼は再び、あのダウナーな女性と再会する。
三十歳になった彼女と、背丈も手の大きさも変わった自分。
保育園の飾り作りを手伝う夜の中で、二人は少しずつ距離を縮めていく。
かつては見下ろされていた視線が、いつの間にか同じ高さに並んでいることに、彼女自身が戸惑い始める。
「大人になるまで待つ恋」は、簡単なものではない。
それでも、時間が確かに育てたものがあると気づいたとき、二人はようやく、あの雨の夜の続きを選び取る。
これは、始まらなかった恋が、時間を経て追いついていく物語