あらすじ
「カニを捨てるだと? ――いいえ、これは日本を買い取るための『資本』ですよ」
一七七五年、蝦夷地の最北端・宗谷。 波にさらわれ、極寒の海に叩きつけられた衝撃で、しがない雇い漁師「イチ」は前世の記憶を取り戻した。
それは、令和の日本で倒産寸前の企業を次々と再生させてきた、冷徹な企業コンサルタントとしての記憶。
目覚めた彼を待っていたのは、根性論だけで網を引く過酷な漁場と、米一粒すら満足に食えない絶望的な格差社会。 さらに、数年後には日本史上最悪の災厄**『天明の大飢饉』**が列島を襲うことを、彼は「歴史データ」として知っていた。
だが、イチは冷笑する。 「絶望? いいえ、これは空前絶後のボーナスタイムだ」
当時、ゴミ扱いされて捨てられていた**「タラバガニ」**。 保存も利かず、価値ゼロとされたこの雑魚を、イチは現代の加工技術とロジカルな流通戦略で「金より重い戦略物資」へと作り変える。
「需要」がないなら作ればいい。 「法律」が邪魔なら役人を共犯者にすればいい。
飢えに震える幕府、プライドだけは高い大名、そして時代を操る老中・田沼意次。 日本中が「一握りの米」に泣く中、最北の地でカニの粉末を積み上げたイチは、静かに歴史の買収を開始する。
これは、一人のコンサルタントが「カニ」を武器に、江戸の経済を、そして日本そのものをハックしていく物語。