あらすじ
「世界は、静かに、 壊れていく 」
世界は、残酷な『血液』の病に蝕まれていた。 血が腐敗し、肉体が石と化す――その静かな終末の淵で。
――南の辺境。 食堂の看板娘 サーヤは、愛する故郷と家族を「黒い石」に変えられた。 彼女に残されたのは、生き抜くための「泥臭い知恵」。 「泣いてる暇があったら、お腹を満たすの!」 彼女は涙を拭い、手斧とナイフを握りしめて走り出す。
――北の王都。 誇り高き第二王女ドラクロワは、地から噴き出した不浄な悪意に国を呑まれた。 彼女が背負ったのは、亡国の絶望と、自身の右腕を焼く「呪いの熱 」。 「わたくしは……『王女』のまま、死なせてほしかった……」 彼女は泥にまみれ、プライドを砕かれながらも、たった一人の従者と共に逃げ延びる。
交わるはずのない二つの運命。 けれど、霧の都ミストラル――宿屋『氷晶の止まり木』で、彼女たちの道は重なる。
剣士、シーフ、聖女、王女、薬屋。 傷だらけの「5人」が囲む食卓には、不格好だけれど温かい、再生の味がした。
「ねえ、ドラ子ちゃん。美味しいものを食べてる間は、人は死ぬことを忘れるんだよ」
これは、英雄の冒険譚ではない。 残酷な世界で、洗濯板を鳴らし、スープを煮込み、ただ「今日を生きる」ために足掻く少女たちの、生活と絆の記録。
「……(ふぅ……)。 この日記を開いてくれた……貴方へ。 絶望の霧が立ち込める夜、……あの子たちが灯した……焚き火の熱を。
300年後の未来から、……私と一緒に……見守ってみませんか? ……ページを捲る準備は、……できていて? ……それでは。……良い、旅を……」