あらすじ

冬の終わりの月曜18時40分、港町ルーメンの「手作りキャンドル工房カンデラ」。硬貨を一枚ずつ並べ、帳面の角を机に揃える店主ババカルのもとへ、赤い封蝋の手紙が紛れ込む。指示はひとつ、「今夜19時、窓辺で青い一本だけ灯しなさい」。  三年前の金曜の朝、役所の出納室で金庫の封印が破られ、ババカルだけが盗人にされた。笑って「君のためだよ」と言った監査担当の顔が、いまも胸の奥で冷えている。  花屋の老女の善意、旧礼拝堂の目撃談、古書店の消えた一行。青い灯、白い灯が指定された夜ごとに、ディマティニは布の端を握って言葉を飲み、デステファンは泣く匂いを当てては涙を舐めてしょっぱさに崩れ、ギジャレアルは配達袋のまま落とし物を追いかけて「礼、言う?」と首を傾げる。笑いながら、手紙は少しずつ「誰が、いつ、どこで、何をしたか」を突きつけていく。  真実が明るみに出たとき、復讐は誰かを壊すためではなく、名を戻し、黙っていた人の手を握りつぶさずに引き上げるための手つきに変わる。灯が消えたあとに残る匂いの中で、ババカルは“次に書く一枚”を選びはじめる。

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カクヨム
カクヨム2026/02/08
  • 現在の作品赤い封蝋と白い灯の十夜