あらすじ

この村では、山に入る前に名を名乗る。 それは信仰でも、掟でもない。ただ、そうしてきただけのことだ。 大学を休学し、帰郷した「僕」は、東京で自分の名前を失っていた。 役割も、夢も、呼ばれる実感もすり減り、残ったのは空虚な名だけだった。 静まり返る山。戻らない青年。祖母が語る「返さない日」。 山は何も語らない。 引き留めることも、拒むこともない。 ただ、名を持たないものを、静かに受け取る。 人が自然に飲み込まれるのではない。 居場所を失った者が、そこに還っていくだけなのだ。 自然の美と不可侵性、 そして「名を持つこと」の重さを、淡く、冷ややかに描く一篇。

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カクヨム
カクヨム2026/02/07
  • 現在の作品山は、返してくれない