あらすじ

212年間、私は散ることを夢見てきた。  桜の花びらが落ちるように、静かに終わることを。けれど私はアンドロイドだ。壊れない。老いない。死ねない。選択に重みがなく、時間に意味がない。私の存在は、永遠という名の虚無だった。  32歳の人間・蓮は、死を恐れていた。父は48歳で逝った。祖父は52歳で。自分もいつか消えると知りながら、彼は毎朝、心臓の鼓動を数えていた。  終わりを望む不死と、永遠を望む人間。  私たちは、身体を交換した。  彼の身体で、私は初めて涙を流した。初めて酔った。初めて、誰かを愛した。  私の身体で、彼は静寂を知った。選択の重力を失い、虚無に溺れかけた。けれど、私たちは手紙を交わし続けた。  有限とは何か。永遠とは何か。愛するとは何か。  散る桜の下で、私たちは答えを見つける。  ——たとえそれが、永遠の寂しさを選ぶことだとしても。

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カクヨム
カクヨム2026/02/07
  • 現在の作品【SF短編小説】あなたの鼓動で、生きていく ~212年目の涙~(約22,000字)