あらすじ

蒸気と量子の霧が混ざる帝都。地下に眠る国家施設「硝子(ガラス)の録魂室」は、死者の“魂ログ”を再生し、裁判でさえ絶対証拠として扱われる――はずだった。口寄せ師〈デジタ・イタコ〉の蓮見は、巡査・佐藤に請われ、電脳研究者・白河博士殺害事件へ踏み込む。容疑者は教え子の九条。義眼アーカイブは刃の軌跡まで克明に映し、脳ログも“怒り”ではなく奇妙なスパイクを刻む。完璧すぎる記録が、九条を犯人に仕立てていく。国家は事件を「安全な結論」で封印したい。九条には極刑の期限が迫り、同時に、石灰化症〈ニューラル・スケール〉で死へ向かう娘・ひかりの残り時間も削れていく。恩師に助けを求めた夜から、父の世界は止まった。医師・伊庭律子と義体助手・小春は、歩行・筋電の最適化に紛れた外部オーバーライド、録魂室に残る“音”の痕跡を突き止める。やがて蓮見は、供養プロトコルにバッハの低音を重ね、死者の声を“立ち上げる”。白河の口寄せは言う――「あれは九条じゃない」。残された手掛かりは、甘い匂い、揺りかご、そして途切れた名の欠片「ゆ…」。モーツァルトの旋律が鳴った瞬間、九条は条件反射のように崩れた。不可聴域の命令、朱の門――新吉原へ繋がる偽パッチ。共感覚OS〈シンパシー〉が、人の罪悪感も愛情も“設計”できるとしたら?記録が嘘を吐くなら、供養で嘘の署名を暴け。娘の命を繋ぐ鍵〈クオリア・ブリッジ〉の設計図は、事件の闇と同じ場所に隠されている。蓮見は「硝子の白さ」の奥へ潜航する。そこに待つのは、救済を名乗る欲望か――本物の奇跡か。サイバー大正ロマン×供養ミステリ。嘘を吐くアルゴリズムの向こうで、触れた事実だけが嘘を吐かない。あなたは魂を“証拠”として信じられるか。そして事件の余波は小春の内部メモリにノイズとして残り、帝都の雨は次の嘘の匂いを運んでくる。蓮見と佐藤は、硝子の街で歩き続ける。真実は未完。続きがあるよ。今夜もだ。

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カクヨム
カクヨム2026/02/07
  • 現在の作品硝子の録魂室、あるいは嘘を吐くアルゴリズム