あらすじ
太陽の下は、僕には眩しすぎた。――あの日、彼女が影に飛び込んでくるまでは。
世界には二種類の人間がいる。 スポットライトの下で笑う「主人公」と、その光に目が眩んで影に逃げ込む「観客」だ。
クラスの隅で古びた文庫本を盾にする僕――佐藤にとって、学園のヒロイン・夏目陽葵は、まさに直視できないほど眩しい太陽そのものだった。 住む世界が違う。関わるはずなんてない。 そう自分に言い聞かせ、埃っぽい図書室の片隅で、僕は今日も「モブキャラ」としての安息を貪っていた。
けれど、あの酷暑の午後。 静寂が支配する僕の聖域に、汗を滲ませた彼女が飛び込んできた。
「ねえ、ここ、空いてる?」
一冊のボロボロな短編集がつなぐ、ほんの一瞬の交差。 これは、夏の魔法も、劇的な奇跡も信じない僕が、彼女のくれた「新しい色の栞」に戸惑い、揺れるだけの、ささやかな恋の物語。