あらすじ
あらすじ
交通事故で命を落とした主人公は、白く無機質な空間で「受付」を名乗る存在と出会う。そこは、あの世とこの世の狭間だった。主人公は人に生まれ変わる機会を与えられるが、条件として告げられたのは、「徳を積みなさい」という具体性のない言葉だけだった。
主人公は同じ年代から人生をやり直す。二度目の人生では、善行や自己犠牲こそが徳だと信じ、他人のために生きる。しかし同じ年齢に達したとき、災害事故によって再び命を落とし、自身の行いがまったく評価されていないことを知る。
その後も主人公は、事故や事件、誰かを庇っての死など、異なる死を繰り返す。徳を得るために他人の人生へ深く介入するほど、善意は次第に歪み、救ったはずの人々の人生が壊れていく。主人公は、自分が「生まれ変わるため」に他人の人生を利用していたのではないかという疑念を抱く。
やがて主人公は、徳とは善行の量ではなく、「自分が救われなくてもいいと受け入れる選択」そのものだと気づく。主人公は徳を目的とした生き方をやめ、誰の人生にも介入しない最後の人生を静かに生き切る。
最終的に主人公は人に生まれ変わることはできなかった。しかし、受付の正体が、かつて同じ問いを抱え、報酬を手放した末に境界に留まった存在であることを知る。主人公はその役目を引き継ぎ、新たな受付として生と死の境界に残る道を選ぶ。
本作は、善意や自己犠牲が容易に消費される現代において、「徳とは何か」「人間らしさとは何か」を問い直す死のループ長編である。