あらすじ
不思議な爺さんと厚化粧の女
~素顔隠して心隠せず~
山田幸子(やまだ・さちこ)
三十五歳、独身。
彼女は、とにかく素顔を見せるのが怖い。
自分に自信がない。
鏡に映る、何も塗っていない自分を見ると、
胸の奥がきゅっと縮こまる。
だが、メイクをすると――
彼女は別人になる。
清楚でおとなしい女性。
気が強く、芯の通った女性。
色気のある、大人の女性。
メイクひとつで、いくつもの顔を持つことができた。
その高いメイク技術と雰囲気で、男性からはよく言い寄られる。
「綺麗だね」
「一緒に飲みに行かない?」
そんな言葉にも、慣れていた。
それでも、幸子は独身のままだ。
なぜなら――
化粧を落とした瞬間、
彼女は急に、気弱な自分に戻ってしまうからだ。
声が小さくなり、
視線を合わせられなくなり、
男性と話すことすら、怖くなる。
だから、夜は越えられない。
朝を迎える約束は、できない。
今回は、
素顔を隠し続けた女と、
それを否定もしなかった、不思議な爺さんの話である。