あらすじ
[名前]
aと俺は昔、物語を書いていた。
俺は今でも書いている。
aはきっともう書いてない。
そのaから写真が送られてきた。
見れば赤ん坊の写真だ。
『子供が生まれたぜ』とaは言った。
写真の赤ん坊はあまり可愛いと思えない容姿をしていた。
しかし生物の幼体というのは概して、生まれたばかりであれば独特のグロテスクな要素を有する。
きっとこの赤ん坊はこれから、ふにふにと愛らしくなってゆくのだろう。
写真の赤ん坊は瞳が黒々として光を宿し、知性の兆しを感じさせた。
『凛々しい瞳をしている』と、俺はその赤ん坊を評した。
俺が子供の名前を聞くとaは、
『凪心と書く』と言った。
そして『さてなんと読む?』と俺に問うた。
検索してみるとどうやらこの名前は【ななか】とか【なこ】と読むらしい。
俺は【ななか】の読みは字に無理をさせすぎていると感じた。
【なこ】という音の響きは人名としては独特すぎやしないかと考えた。
俺は悩んだ挙句、『【なこ】か?』と答えた。
答えたあとで別の考えが頭骨内部で閃いた。
【なぎ】というのもいいかもしれない。
心の字を書いてそれをあえて読ませない、というのはとても洒落ているように感じた。
だから俺は『やはり【なぎ】かもしれない』と言った。
『正解は【なこ】だ』と、aは言った。
俺は少し考えてから、『いい名前だ』と返事をした。
いい名前だと、思ったからだ。